にっきにゃっき日記

あまり決めずにいろいろ書いています。気が向いたら覗いてください。うれしいです。

方丈記とモーツァルト

f:id:cembarock:20200515000728j:image

きょうは、何を書きましょうか。
以前、法事で親族が集まったときの話です。

もう60歳に手が届くのですが、彼は『方丈記』に傾倒していて、過去に、二百回以上読んで、まだこれからも読むというのです。

方丈記は学校でも習った鴨長明(かものちょうめい)の随筆、エッセイですが読むぼどに面白いというわけです。

わたしも、方丈記は好きです。

「ゆく川の流れは絶へずして、しかももとの水にあらず
「よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、ひさしくとどまりたるためしなし
「世に住む人とそのすみかもまたかくの如し
「とほく異朝をとぶらふに……

少し記憶が違う部分があるからもしれませんが、流れるような名文であり、このへんまではそらで言えます。かつて中学や高校の授業で暗唱させられた方も多いことと思います。

ちなみに、歴史の試験でしたか、書名を『万丈記』と間違って書いてしまい、いまだに我ながら笑いますが、似た漢字だけに答案を見た先生もニタっと苦笑したことでしょう。

ところで、方丈記中盤では、京の都の飢饉や流行りやまいでたくさんの人が亡くなったことなども書かれていたと思いますが、わたしが好きなのは終盤です。

作者が童心に返っておさない子どもたちと遊び戯れるシーンです。
初めて読んだときは感動した、というかびっくりしました。

遠い昔の、それも世捨て人のような人、きっとかた〜い人だ、そんな先入観があったからだと思います。

そんな観念がひっくり返った瞬間でした。

かといって、二百回どころか、十回も読んでません。通しで読んだのは二回だけです。

ところで、親族の彼への対抗心でもないのですが、思い返せどそれほど読み返した本などありません。元来一度読んだ本はあまり再読しないタチなのです。しかし、ひらめきました。

分野こそ違うけど、あったじゃないか!はっきり数えてこなかったけど、二百回以上繰り返したものがあるある。

というのも、二十歳ごろから五十歳過ぎまで三十年あまり、ほとんど毎日聴いていたのが、モーツァルトの音楽です。一辺倒というやつです。

中でも、ピアノ協奏曲であり、さらにその中でも二十番以降のはほんと、よく聴いたものです。名曲名盤のひしめくカテゴリーですし。

何十回聴いても、百回聴いてもまた聴きたくなる。聴くたびに美しく、新しくて、楽しい。何かを与えられる。それは重くはなく軽やかだけど軽々しくはない。

ほほえみながら泣いていたかと思うと、逆に泣いているそばから笑みがこぼれだす。何かで辛いときは、気がつくとそばにいてくれてたり。でも出しゃばったり、必要以上におしつけたりはしない。

豊かなものはいつも与えてくれる。新たな発見の源泉。だから好きになる。回数は増やそうとして増えていくわけではないのです。

今では、バロック音楽などもっと古い時代の音楽に傾いてきて、60歳過ぎてから楽器の演奏を趣味で習ってもいます。

そんなこんなで、以前ほどは聴かなくなったモーツァルトですが、友達のような、恋人のような僕にはなくてはならない、いちばんの存在なのです。